森 俊宏(もり としひろ)/ Mountain

自己紹介
木工の世界は広く深く、もう四半世紀程もこの世界に身をおきながら、まだ入口付近にいるような感覚になることもあります。それほどこの木工の世界は広く、深いのです。
30歳を前にして脱サラし、木工の道へ入りました。修行先では年下の兄弟子が二人。最初の頃は遅く入った気負いから、全てを削ぎ落して全身全霊で木工に挑んでいました。技術はすぐには身につかない。ならば知識だけでも詰め込もうと木工に関する本を読みあさり、感覚だけでもつかもうと工房から出る端材を家に持って帰り、切ったり割ったり削ったり、煮たり噛んだりさすったり、釘を打ったりビスを打ったり、色を塗ったり仕上げ塗料を塗ったり接着したりしていました。実は今でもそんな感じの毎日なのです。
樹齢何百年の樹も元は小さな小さな種でした。その樹はイワナの住む渓の畔にあったり、尾根を臨む風すさぶ峠にあったり、広大な森林の一部であったりしたことでしょう。そんな樹々達が様々な要因で伐採され材になります。材は木辺に才能の”才”と書きます。より使いやすいように、より長持ちするように、より美しく見えるように作り手は木材を見て”才”として活かすべく木取りをし、手仕事によって形にします。この”形”こそが木工家の作品なのです。その作品は人の手に渡り、暮らしに彩をそえることでしょう。この一連の流れこそ私は”文化”であると思っております。そんな文化の橋渡し役になれれば幸いです。
Mountainの由来
「山無し県に生まれ育ったので「山」に憧れがありました。そしてここには「那須岳」がありますので、「山=Mountain」としました。」と答えています。
実は・・・「Mountain」とは、アメリカのブルースロックバンド名から来ています。この那須の土地をはじめて見た時、車の中でMountainの「For Yasgur's Farm」をかけていました。どこか牧歌的な香りのするこのロックナンバーが、この那須の土地と微妙に重ね合わさり、屋号をMountainとしたのです。しかし、このバンドを知らないと、また、この曲を知らないと意味の薄い話になってしまいますので、あまり話していません。ギブソンのシングルコイルをこよなく愛する巨漢ギタリストと、クリームの名プロディーサーによるバンドが創り出す曲です。また、Yasgur's Farmとは、ウッドストック(’69)の舞台ともなった、あのマックス・ヤスガ-氏の農場の事です。
好きな物・事
木工、木、樹、自然、釣り、物作り、秋の陽、春の転寝、甘い物、美味い物、月、星、ロック、ブルース、ギター、アルファ・ロメオ、レシプロエンジン、マルク・シャガール、ジミ・ヘンドリックス、フランク・ザッパ、中島 敦、那須、マカロニほうれん荘、カミさんとコドモタチ、他
略歴
1970年 | 千葉県にて生まれる。 |
1994年 | 東京理科大学卒業。 東京の会社に入社。主に建築設計の仕事をする。 |
1999年 | 退社。その後魚河岸のアルバイトをしながら物作りの現場を見て歩く。 |
2000年 | 家具、木工の技術習得のため静岡県の建築・家具工房に入る。 |
2001年 | 基礎を学ぶ為、埼玉の職業訓練校に入学。在学時より独立の準備を始める。 |
2002年 | 同校卒業、近隣の家具工房に入社。独立に向け具体的に動き始める。 |
2004年 | 那須高原にて「オーダーメイド家具工作 Mountain」設立。 |
2024年 | 「オーダーメイド家具工作 Mountain」から「ウッドクラフトMountain」に変更。 |
賞歴
2008年 | 第5回全国「木のクラフトコンペ」金賞受賞 |
2010年 | 第6回全国「木のクラフトコンペ」クラフトコンペ賞受賞 |
2010年 | 「工芸都市高岡2010クラフトコンペティション」入選 |
店主からのご紹介
移住してしばらくした頃、私と同じ年に移住した、年齢も同じ木工家がいることを知りました。何かの雑誌で見たのだと思います。
当時の私は会社員人生で最も忙しい時期にあり、地元に友だちをつくる余裕もなく、ただひたすら新幹線で東京まで往復する日々を過ごしていました。
移住から10年が過ぎた2014年だったと思います。ようやく初めてその工房を訪問しました。
それが森俊宏さんとの出会いです。
すぐに意気投合しました。何といってもふたりとも趣味がフライフィッシング。今でも忙しい合間を縫って何とか日程を合わせ、ふたりで山奥の渓流へ釣行します。



森さんと出会い、森さんのつくる木工品を見て、私の中ではるか昔に置いてきた木工への想いが蘇りました。その木工品が写真のカップです。木工品を販売することを考えはじめた時、最初に取り扱いたいと思ったのもこのカップでした。この美しさと頑丈さに今でも惚れ惚れします。

私の家では食器類、小物入れ、時計、おかもち、机と椅子等々、長年にわたって森さんの木工品を使い続けています。



理系の大学を卒業し建築設計から仕事をはじめた森さんは、ものごとをとことん突き詰める姿勢をもった木工家であり、そのこだわりと完成度には目を見張るものがあります。
木工品の店を開くにあたって最初に相談したのが森さんでした。それは二人で南会津に釣行した時だったのですが、驚くほど即答で背中を押してくれました。その後も度々森さんの工房を訪れては相談しているのですが、いつも半分はフライフィッシングの話になってしまいます (笑)
以来、森さんは私の樹木、木工の先生でもあります。
