仕上げ塗料の種類と特性

 仕上げ(塗装)の方法には様々なものがあります。長短併せ持った各種方法において、その短所を克服するよう開発が続けられており、ウレタン樹脂ひとつとっても一括りに語ることができません。また、目止め(木の道管などを埋めること)に異なる塗料を使う場合もあり、さらに複雑になります。

 当店の取り扱う木工品は、店主の信頼するつくり手が検討し選択した仕上げ方法が用いられています。店主がその内容を確認しており、お勧めできない仕上げを選択しているつくり手の商品は取り扱っていません。仕上げ方法は組み合わせまで考慮すると極めて多岐にわたるため、ここでは代表的な仕上げ塗料をご紹介します。(ただし、これもまた塗料ごとに欠点を克服するための様々な工夫がなされているため、あくまで参考としてお読みください。)

オイル

 主に植物性のオイルを染み込ませる塗装方法です。表面に塗膜をほとんどつくらないため、木の肌触りをそのまま感じられます。一方、日常の使用でオイルが抜けやすく、塗装の効果は長持ちしません。オイルのみで塗装した場合、染み込むと濡れた濃い色になり、オイルが抜けてくるとその部分の色は薄くなります。

 単純なオイル仕上げのみのカップで例えば熱いコーヒーを飲むと、コーヒーそのものの繊細な香りや味を楽しみたい場合、カップから出る成分が気になることがあります。これはオイル(特に手入れで使用しているオイル)の種類、鮮度、量などによって程度に差があります。また、木そのものにも味や香りに影響する成分があるため、樹種や乾燥度合いによっても異なりますし、前に飲んだ飲みものの匂いも残ります。どの程度どう感じるかは個人差があります。

 最もシンプルなこの仕上げ方法は手入れが簡単で、塗膜がないため傷がついても気になりません。経年変化を楽しむことができます。店主が最も好む仕上げ方法です。

ウレタン樹脂

 ウレタン樹脂で表面に塗膜をつくり、硬化させます。厚めに塗ると光沢が出る一方、木の触感や香りはなくなります。この点は好みによって長所でもあり短所でもあります。

 ウレタン樹脂塗料の原料(硬化する前の状態)には人体に有害な物質が含まれています。そのため、ウレタンと聞くと悪い印象を持つ方もいらっしゃるかと思います。しかし、通常の使用において一旦ウレタン結合したもの(塗装によって硬化した状態)が再度分解されることはなく、当店の食器に使用されているウレタン樹脂は食品衛生法に適合したものです。また、最終的にオイルやガラス塗料で仕上げる場合であってもその前にウレタン樹脂で目止め・木固めを行うことがあります。

 ウレタン樹脂は完全に硬化して塗膜を張るため、木による味や香りへの影響は小さくなります。使用はじめは塗料の匂いを感じる場合もありますが、使ううちに匂いは小さくなっていきます。

 塗膜が剥がれた部分を回復させるには制作元か専門家にお願いすることをお勧めします。当店の販売品については当店にご相談ください。

ガラス塗料

 比較的最近開発された塗装方法です。薄い塗膜をつくり木を保護する一方で、塗料は木への浸透性が高く、木の素材感を損ないません。

 例えば、コーヒーの繊細な味と香りを楽しみたい場合、オイル仕上げは前述したようなデメリットがありますが、ガラス塗料は完全に硬化して塗膜を張るため、味や香りへの影響は小さくなります。使用はじめは塗料の匂いを感じる場合もありますが、使ううちに匂いは小さくなっていきます。ただし、塗膜が薄い場合、木の香りや前の飲み物の匂いが残ることがあります。これらは全て塗料と塗装方法(塗膜の厚さ)、樹種によって異なります。

 塗膜が剥がれた部分を回復させるには同じガラス塗料を再塗装することになりますが、塗膜が薄いのでオイルで代替してもあまり気になることはありません。手入れもオイル仕上げと同じやり方で問題ありません。剥がれた塗膜をガラス塗料で回復させる場合は制作元か専門家にお願いすることをお勧めします。当店の販売品については当店にご相談ください。

 古くから使われてきた塗料であり、接着剤としても最高強度を誇るのが漆です。(金継ぎの接着に使用されます。)

 一般に木工品は、酸性のもの、アルカリ性の強いものと接触すると塗装の劣化や木の変質・変色を起こしやすくなりますが、漆はそれらに対しても非常に強固です。重ね塗ることで強度が増し、また光沢も出ます。塗膜が厚い仕上げが多いですが、通常の仕上げで気体・液体の浸透性がゼロになることはありませんので、樹種や木材の乾燥度合い等によっては、木の匂いも通過します。

 塗膜が剥がれた部分を回復させるには制作元か専門家にお願いすることをお勧めします。当店の販売品については当店にご相談ください。

番外編:塗料なし

 最後に何も塗らないという仕上げをご紹介します。この場合、サンドペーパーで磨かずに刃物だけで仕上げることが多いと思います。

 鋭利な刃物で木の表面を切り取ると、水分をかなり弾きます。例えば、サンドペーパーで仕上げた表面と鉋で仕上げた表面では、前者は水を吸い、後者は水を弾きます。ペーパーがけは仕上げ塗料を染み込ませるための作業とも言えるわけです。

 刃物で最後まで仕上げることで、塗料による保護が一切なくとも、ある程度染みや汚れに強くなるというわけです。ただし、化学反応による変色には無防備です。耐久性は樹種と部位、木目によります。