木工食器の使用方法
初めて購入するときは日々の使用を難しく考えてしまうかもしれません。でも、慣れてしまえば特に意識することはなくなります。世の中でよく「一生もの」という言葉が使われますが、道具というのは「使ってなんぼ」です。つくり手は保管してもらうためではなく使ってもらうために制作しています。あまり気を遣わずどんどん使ってみてください。そうすることで自分なりの使い方や手入れのタイミング、手入れの方法が身につきます。
日々の使用上の注意
木は湿度によって収縮・膨潤する特性があり、それが反りや割れの発生する原因になります。木の含有水分に強く作用する機器は、電子レンジ、オーブン、食洗機等です。
急激な温度変化も同様です。口にする程度の温度の液体は問題ありませんが、沸騰したお湯を注ぐのはよくありません。
直射日光の下に長時間さらすと、過度に乾燥したり、塗料や木に変化・劣化をもたらします。冷蔵庫も湿度がかなり低いので避けた方がよいです。
浸透性のある仕上げの場合(当店が取り扱う商品はほとんどがそうです)、長時間水や液体に接していると木の中にそれが入り込み、染みをつくります。また、接している面が膨潤し、その面が凸型に反ります。塗膜をつくるタイプの仕上げも浸透性がゼロで出ない限りは、程度の差はあれ同様です。
洗浄については一般の量販店で手に入る洗剤とスポンジを使用できます。以下のことにご注意ください。
洗剤は中性または弱アルカリ性のものをご使用ください。酸性のもの、アルカリ性の強いものは塗装の劣化や木の変質・変色を起こしやすくします。
硬いものでゴシゴシ擦るのは避けてください。塗膜のある食器は塗膜が傷ついたり剥がれる原因となります。
オイル仕上げの場合、洗浄力が強すぎると油分を抜いてしまい、乾燥しやすくなります。
と、いろいろ書きましたが、多少の変化や劣化は使用上問題なく、日々の使い方にも洗浄にもそれほど気を遣わなくてよい、というのが店主の考えです。オイル仕上げの場合、オイルが抜ければ足せばいいだけです。染みも使い込んだ証です。店主の家のダイニング・テーブルはそもそも平らじゃないので、食器の反りなど気づきません。あえて押して確かめようとしても、そのテーブルの上では真っ平らな陶磁器の皿もがたつきますから。(店主は反りや割れも楽しみます。)
店主の日常の使用方法
電子レンジやオーブンで使用する器、冷蔵庫などで長時間保存する時の器以外はほぼ全て木工食器を使用しています。日常的にコーヒーをよく飲みますが、最大92℃で淹れ、陶器か木工カップを使います。木工カップを使う場合はカップからの匂いが邪魔しないようにいつも同じものを使います。(100℃で淹れる紅茶を木工カップで飲む場合は、ポットで少し冷ましてから注ぎます。店主はたまにしか紅茶を飲みませんが、飲む時は陶磁器を使います。)
食後の洗浄については、飯碗など、食べものが食器に固着するものは軽く水につけ置きします。冬はお湯を使います。ふやけたら、食器用石鹸か中性洗剤で手洗いか柔らかいスポンジで洗い、水切りラックに置きます。食器棚に仕舞う時はカビが生えないようにしっかりと乾燥させてから仕舞います。皿は水切りラックに置く時も食器棚にしまう時も縦に置きます。その方が面に湿気が溜まりにくく、反りを抑えられます。横置きにする場合は上下逆さまに置くとよいです。
(と書いておきますが、実際は食卓や流しに一晩ほったらかすことがあります。ただし、そうして水などの液体に触れっぱなしにすると皿は反りやすいです。)
手入れの方法(オイル)
オイル仕上げのものは乾いてきたらオイルを塗ってください(後述)。手入れの頻度に一律の解はありません。店主が会社勤めの時代はまとめて一年に一度か二度でした。口に触れる部分などはかさついてくると気になるでしょうし、手入れはすればするほど、木が適度な油分・水分を維持でき、反りや割れを防ぎ、また、汚れや変色にも強くなります。
ガラス塗料のものも、塗膜の厚さによりますが、同じくオイルによる手入れ方法で対応できます。
塗膜をしっかりつくるウレタン樹脂や漆は日々の洗浄以外に手入れは不要です。塗膜が傷ついたり剥がれたときの修復は制作元か専門家に委ねることをお勧めします。当店の販売品については当店にご相談ください。
下地づくり
カップやスプーンなど口にする部分がざらついた場合は、オイルを塗る前にサンドペーパーで磨きます。320番位で十分ですが、さらにつるつるに仕上げたければそれ以上のものをお好みでご使用ください。
オイルの摺り込み
オイルを木に直接垂らすか乾いた布に染み込ませて摺り込んでください。その後乾いた布で拭き取ってください。どちらの布もウエスやキッチンペーパーで代用可能です。ちなみに、店主は素手で擦り込むのが好きです。そのほうがオイルの使用量も少なくてすみます。
オイルは食用で味・香りのしないものを選びます。乾性油が向いています。乾性油の中でもヨウ素価のさらに高いエゴマ、アマニ等をお勧めします。ただし、ヨウ素価が高くても低温度あるいは高湿度の環境下では乾きにくくなります。乾いたと思っても時間が経つと道管から噴き出してくることがあります。噴き戻した場合は再度拭き取って乾かしてください。(なお、スプーンなどは手入れ用のオイルを購入せずにご家庭で普段使っている食用オイルを極薄く摺り込んでも構いません。ただし、表面がべたついて乾き切らない間は、食器棚等には仕舞わずにご使用ください。)
乾燥時間はオイルの種類や染み込み度合い、温度、湿度等によりますが、店主の手入れ法(ヨウ素価の高い食用油を使用します)では1-2日程度で使用します(内部まで乾かすにはさらに時間を要します)。条件によっては乾性油でも乾きがとても悪くなります。
なお、オイルを含ませた布や紙は自然発火することが知られています。これは天ぷら油でも美容オイルでも同じです。一般的な予防策として、捨てる場合は水を十分に染み込ませておくこと、洗濯する場合は乾燥機を使わないことと言われています。
実際の手入れの様子は「木工食器の経年変化と手入れの例(オイル仕上げ)」ご覧ください。