木工食器の経年変化と手入れの例(オイル仕上げ)

 木工食器は定期的な手入れをしなくてもそのまま使い続けることができますが、オイル仕上げの場合は手入れをすることで木が適度な油分・水分を維持でき、反りや割れを防ぎ、また、汚れや変色にも強くなります。店主が最も好きな仕上げ方法がこのオイル仕上げです。塗膜の薄いガラス塗料仕上げも同様に手入れできます。

 (「木工食器の使用方法」も併せてご覧ください。)


 実際に店主が使っている中塚さんのオイル仕上げのスプーンの写真をご覧ください。(現在この商品はガラス塗料仕上げになっていますが、手入れ方法は同じです。)それぞれ、10年ほど前の購入当時(1枚目)、1年ほど手入れをしていない状態(2-5枚目)です。

 少し毛羽立っているので、この日は320番のサンドペーパーで磨きました。(毛羽立っていなければペーパー掛けは不要です。そのまま後述の通り、オイルを摺り込んでください。)

 さらにつるつるにしたい場合はサンドペーパーの数字を上げます。

 これにオイルを摺り込みます。木粉が気になる場合はその前に水洗いをして乾かしてください。ここではエゴマオイルを使用しました。手入れに必要なオイルの量は、木が吸い込む量によりますが、素手で摺り込む場合はほんの少しで足ります。今回は1本1滴程度です。写真の量で2本手入れしました。

 オイルを摺り込んだ後です。手入れはこれで終了です。1日ほど乾燥させてから使用します。

 このスプーンはおそらく、オイルが抜けた状態で流し台に置きっぱなしにした結果、裏側が黒ずんだものと思われます。このように染みができるとサンドペーパーでの表面研磨では消せませんが、自宅用なので店主は気にしません。


 次の写真は廣田さんのパン皿(大)です。(当店の商品「四角い取り皿」はこれがベースです。)こちらも10年近く使った状態です。店主は年に一度ほど手入れをしていますが(まめにできる人はもっとした方がいいですよ)、乾燥した部分が白くなっています。

 このような皿は通常ペーパー掛けをせずにオイルを摺り込みます。角の部分はオイルが抜けやすく、また白くなりますが、オイルを摺り込んだ方が全体的に強くなります。


 樹種や仕上げによっては使い始めてすぐに毛羽立つことがあります。次の写真が毛羽立った状態です。写真は宮薗さんのbabyで、樹種はナラです。重厚な雰囲気を醸し出すナラですが、毛羽立ちやすい材でもあります。

 漆の部分をマスキングテープなどで保護してからサンドペーパーをかけます。

 次の写真は400番のサンドペーパーを軽くかけて、水で洗った後です。このあと前述の通りオイルを塗って終了です。


 樹種や仕上げによっては使い始めてすぐに染みになることがあります。次の写真は煮物等の汁によって染みができた状態です。写真は高須さんのボウルで、樹種は一つ目がカバ、二つ目がセンです。

 毛羽立っていないので、サンドペーパーはかけず、エゴマオイルをすりこみました。これだけでこの染みはほぼ目立たなくなりました。また、このような手入れを続けることで、徐々に濡れ色の艶が出て、染みになりにくくもなります。


 次の写真は同じく中塚さんの箆(へら)です。購入時と経年後の写真ですが、店主は使用時に調理用の油をまとう箆を手入れすることはほとんどありません。手入れをする場合は前述のスプーンと同様です。


 このような経年変化がオイル仕上げ(あるいは塗膜の薄いガラス塗料仕上げ)の木工食器の魅力です。角は乾燥したり削れやすいので、白っぽくなります。傷も同様です。また、水分を吸った状態で金属に接したまま放置すると黒ずみます。白っぽくなった部分は手入れで復活できますが、黒ずんだ部分は変色しているため戻すのは困難です。しかし、これはむしろ使い込むことによって出せる味だと思います。

 今回写真を撮るために手入れをしましたが、オイルが抜けても使用上問題はないので、無精な店主は写真の手入れ前の状態でかなり長く使い続けます。

 手入れが好きな方はこのような仕上げの木工食器をお勧めします。まめに手入れすると深みのある色に経年変化し、どんどん愛着が湧くことでしょう。

 ぜひ、経年変化を楽しんでください。