山本 雄次(やまもと ゆうじ)/ 艙房 Soubou craft

自己紹介

京都生まれ 京都育ち

大学で立体・彫刻を学び
飛騨高山で木工家具修行の後
琵琶湖の湖北マキノにて独立

自分の木工人生を遡ると、小学生の記憶が浮かびあがります。
親との出先で木のテーブル作りのワークショップに参加した日。
それは釘で作るごく簡単な物で、低学年の自分は親に見守られながら作業し、テーブルが実際に目の前に出来あがった時、とても嬉しかった。
木なら自分にも作りたい物が作れる、と、幼な心にも木という素材に親しみと興奮を覚えた日だった。

それから月日が経ち、今自分の暮らしと仕事を支えてくれているものは、住む土地を豊かにしてくれる生きた木々であり、素材としての木です。

自分の想像を超えて魅力を見せつけてくる木という素材に、日々魅了されています。

 

略歴

1983年 京都出身
2007年 京都精華大学立体造形科 卒業
2007年 第25回朝日現代クラフト展 入選
2009年 第49回日本クラフト展 入選
2010年 飛騨高山森林たくみ塾 卒業
2010年 Hay Stack Mountain school(USA)に奨学生として渡米
2011年 京都精華大学建築学科 助手勤務
2014年 艙房 Soubou craft 設立
2016年 9月 工藝の庭 出展 11月 灯しびとの集い 出展
2017年 11月 京都高島屋 特選工芸ギャラリー 出展
2018年 5月 松本クラフトフェア 出展
2018年 6月 京都高島屋 特選工芸ギャラリー出展
2018年 10月 喫茶古良慕(滋賀県高島市)にて個展
2018年 11月 灯しびとの集い 出展
2019年 高島市マキノ町にギャラリー完成

店主からのご紹介

 店を始める準備に入ってすぐ、那須町の友人であるJARDIN BLANCのRARIさんから頂いた連絡がきっかけでした。とても素晴らしい作品をつくる滋賀の木工家に会って大人買いしたと。その木工家が山本さんでした。

 RARIさんから送られてきた作品の写真を見て興味を持ち、WEBページの経歴に「森林たくみ塾」を見つけた私はすぐにメールを送りました。私は20代の頃にたくみ塾の願書を取り寄せたことがあり、当時開塾されて間もない稲本正さんの著書も数冊読んでいました。ちょうど関西方面の遠征を計画していたので、その時期の訪問をお願いしたところ快諾頂き、10月末に訪問することになりました。

 Soubou craftの工房とギャラリーは琵琶湖の北岸にあり、訪れたことのない土地でした。歴史を感じる漁師町の建物を眺めながらギャラリーに到着すると、物腰優しい山本さんが迎えてくれました。同心円の切削デザインが施された大きな丸テーブルに始まり、椅子、ランプ・シェード、皿、箸、スプーン、そしてカヌーまで。とても見応えのある空間です。大きな同心円の切削に「え?どんな旋盤?」と思ったのですが、その疑問の答えは直後に見せて頂いた工房で目にするのでした。

 眼前に琵琶湖が広がる工房はとてつもなく大きく、機械類もとにかく大きいのです。ああ、ここから生み出されるのか、とすぅーと気持ちがクリアになりました。いつもそうですが、私はギャラリーよりも工房の方が落ち着きます 笑

 アートも建築もそうですが、人がつくるものは道具と密接に関係していて、道具が時代をつくってきたとも言えます。同様に木工家のつくるものはその人の使う道具が作風に色濃く反映されます。山本さんの場合、この大きな空間と機械、そして目の前に広がる浜辺が影響しているように感じました。

 工房には春にたくみ塾を卒業したばかりの方が見習いに来ていて、そこから栃木にまつわる色々な話に発展したのですが、その話はこの方が独立した時に(=当店で販売する時に 笑)ご紹介しますね。

 この一度目の訪問時は全くビジネスの話をせず、とても気に入ったスプーンと皿を購入して帰ってきました。

 実際に使ってみてその良さが身に沁みた私は、3ヶ月後、用件も言わずに二度目の訪問をお願いしました。着いて早々に制作・納品を頼み込む私に、山本さんは「縁ですね」と応じてくれたのでした。

 その木工品がハードメープルのスプーンです。スプーンのつくり手はとても多く、それぞれに個性を発揮しているわけですが、このスプーンには痺れました。小さいけれども、この形にハードメープルという樹種の個性が最大限に表れていると思います。エッジと繊維のしなやかな強さがなければこの形状は実現できません。金属のスプーンに勝るとも劣らない薄さ、金属ではなし得ない軽さとしなやかさと熱伝導率の低さ。木はすごいなぁと改めて感じさせるスプーンです。

 このスプーン、当然ながら道具としての機能性は抜群です。柔らかく崩れやすいものを切り取ったり、底を掬うとき、この薄さが力を発揮します。

 なかなか訪問できない距離ですが、今後も新たな日用品を展開できることを願っています。


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