山岸 貴幸(やまぎし たかゆき)

自己紹介
”古き良きものを永く大切に”
これは、僕が前職の家具工房で働いていた時に大切にしていた言葉。
先人達が数十年数百年と大切に紡いできた銘品も良いが、僕はもう少し肩の力を抜いて気兼ねなく使えるくらいの、程好く使い込まれた古いものの方が興味を惹かれる。
古いものを見ていると、これはいつの時代のもので何に使われていたのだろう。どうやって使うものだろう。と、いつも頭の中に?マークがいくつも並ぶ。そうした疑問にあーでもないこーでもないと考えを巡らせ、時には店主に尋ねたりしてみる。そして、一つの答えに辿り着く。そうして辿り着いた答えは、正しいこともあれば正しくないこともある。でも、正直なところ、答えに辿り着くことよりも、いくつもの散りばめられた手掛かりからいろんな考えを巡らせ、沢山の気づきが貰える時間の方がただただ楽しく心地良く感じる。
これまで僕が目にしてきた古き良きものたち。それはもしかすると数十年後には消え、文献や資料といった形にも残らず、今この時にしか見られないものもあるのかもしれない。そうした多くの古き良きものたちがくれた気づきを自身に蓄え、自分なりのデザインへと発展させ、また誰かにとっての新たな気づきとして紡いでいけたらと思う。
古いものから木工の世界に足を踏み入れた者として、そうした想いは大切に心へ秘めつつも、まだまだ技術も知識も経験も足りない。そんな自分にできることは、1日1日コツコツとものづくりや木、そして道具と向き合う時間を積み重ね、自身が思い描くものを丁寧に形にしていくこと。
そして、その先で生まれたものが、ご縁をいただいた方々の日常に溶け込み、日々の暮らしの小さな幸せ、あるいは心地良いひとときへと繋がっていきますと幸いです。
好きな物・事
木工、木、植物、自然、ものづくり、古いもの、旅、キャンプ、珈琲、お茶、お香、古着、陶磁器、ガラス、建築、写真、映画、猫、食べること、寝ること
略歴
1991年 | 石川県に生まれる。 |
2014年 | 富山大学卒業。 石川県内に就職。主に植物販売の仕事をする。 |
2018年 | 退社。 栃木県にて家具工房に勤める。主に古家具の修理に従事。 |
2022年 | 退社。 |
2023年 | 真岡・茂木を拠点に制作活動を行う。 |
店主からのご紹介
初めて出会ったのは2024年10月、益子の高須さんの工房でした。若いつくり手を探していた私に高須さんが「今うちに手伝いに来てくれているいい子がいるよ」と紹介してくれたのでした。
仕入先のつくり手の年齢が私の前後に集中する中、そこから大きく外れた若い山岸さんは眩しすぎる好青年でした。
そこで見せてくれたのがお香立て。お香には無縁の人生を送ってきた私はお香立てというものをよく知らず、ただただ、そのお香立ての佇まいに見入ったのでした。


このシンプルな形は、食器でいうとプレートとカップの面を同時に見せてくれます。木目は角度を変えつつ繋がっていて、全ての面は大きく、装飾なく、視覚は木理に集中します。この形に取ってこそ発露するこの木の個性。すっかり気に入りました。
これまでの経歴やこれからやりたいことなど、色々とお話をさせてもらい、その場ですぐに発注を決めました。そして「そのお香立て使ってみてください」というお言葉に甘えて持ち帰り、次の日から私のガレージ工房では毎朝お香を焚くのが日課となったのでした。


朝は氷点下になる暗いガレージに、ラジオ、灯油ストーブと共にこのお香立てはなくてはならない存在になりました。
これからが楽しみなつくり手です。

